職人と飲んだ

職人さんと飲んだ。

私の会社は残業こそ多いが早く帰りたい時は早く帰れる。この日も先輩に戸締まりの引き継ぎをお願いし18:30に退勤した。

さて、飲むか…

約束した相手は職人さん2人だ。1人は僕と同い年で相手はだれとでも喋れるような気さくさもあり一番仲良くしている。若干チャラいがものすごく優しい人だ。
もう1人は僕より年下の男の子で声と言動が女の子みたいで可愛い大工さんだ。

その子と同い年の彼が前の現場でも一緒で仲が良かったらしい。
僕はその年下の彼とはこの飲みの前日に初めて会話したくらいだったが彼の強烈さは一瞬で理解した。
彼女が欲しい、ナンパがしたいと言いつつ女性の前だと全く話せなくなるらしい。かわいい。

その3人で尼崎あたりでモツ鍋を食した。

同い年の彼は謎が多すぎた。
・施設育ち
・9才の子どもがいるシングルファーザー
・埼玉に声優の彼女がいる(別れたいらしい)
・今はたまにソフレと暮らしている
・無類のナンパ好き
何がホントで何がウソか分からないがそれが本当だとしてもおかしくないくらい彼はしっかりしていた。
まあ半分くらいは信用してないけどもう少し仲良くなるのならその辺をもっと深堀りさせたいなと思っている

もう1人の子はおじいちゃんと一緒に働いている。
今その業者は20人ほど働いているが一番若いのがその子でほとんどが50代~60代、おまけにクセのある人ばかりで正直評判は良くない。

しかし、年下の彼は唯一の良心かって思えるくらい純粋だった。それゆえ今のネチネチなおっさんばかりいる環境がとても窮屈で嫌だと愚痴を吐いていた。
おじいちゃんもクセのある1人で抜け出せないらしい。
彼は手際良くはないもののちゃんと質のある造作をしており仕事熱心であった。

まあ残念ながらこの現場はとても工期に追われている。
一部屋1人部屋の中の造作大工をしておりその彼が結果として遅く足を引っ張っているのでベテランのおっさんに早く作れとネチネチ言われているのである。可哀想である。

僕の先輩、上司、他の業者さんなどの愚痴を吐いて二次会へと足を運んだ。

行き当たりばったりではあったがキャッチの女性に声をかけられガールズバーだと言うのでそこの女性のいる店で呑むことにした。

やはりナンパ好きの彼は女性の転がし方がうまかった。ほんの一瞬で自分を優位だと女性に認識させつつ女性の反応1つに敏感に対応し適度にいじる。
僕は彼の邪魔をしないように、でも自分がどういう立ち位置であるべきか判断しながら喋っていたがそれで精一杯だった。

年下の彼は僕らと距離を置いてずっと顔を横に振っていた。かわいい。

僕は初めてガールズバーとやらに行った。普通の飲みと違う点は店員が全員女性ということとその店員もお酒を呑むのだがその分の値段は客が負担する(一杯 S500円 M1000円 L1500円)、いわゆるサービスしないといけないという点だ。

昔の僕ならなんでそんな非合理的なシステムに金を出さなきゃいけないなかと疑問符が沸いてただろう
しかし出会い、そして時間を共有することに金銭をケチっててもそれはつまんない人生だ。

そういった気付きは非合理的なものから生まれることは意外と多いものだ。
無駄こそ有意義を形成するものだ。心のノートにメモっとけ


キャッチしてた女性はわいわい系で話を盛り上げる起点としてありがたい存在だった。
もう1人は今日からデビューらしくちょいポチャで愛想もさほど良くなく会話の輪っかに入っていなかった。本人曰わく緊張していたらしい、まあ僕も初めてだから気にすることないよと少し会話した。

どうしてもわいわい系の女性と比べて見劣りしたがどうも心がもやもやした
現場にいる僕がまさしくその新人女性と重なってしまったからだ。

周りから見た僕はこんな無愛想なのかな?だったらそりゃ喋りかけづらいよな、と気を遣われているのは僕が無表情だからか、といざ新人女性と話そうとした逆の立場となって初めて芯から理解した。

人の魅力は2つだ。与えられたものか自分で輝かせるか、2つに1つしかない。

非情にも与えられた魅力というものの力は凄まじいものである
後からもう1人女性店員が入ってきた。その人もおとなしい人ではあったがめちゃくちゃかわいかった。乃木坂の齋藤飛鳥並みの顔の小ささで背丈も低く妹的な可愛さを放ってた

当然のことながら他の男性2人はその可愛い女性に釘付けとなり先ほどの2人の店員とは明らかに違う態度で話していた。

結局美男美女には勝てない。それは天賦の才だ。仕方がない。ただそれを言いたいのではない。

明るく接していれば相手も心を開く。話の起点となる。そうすると周りを巻き込みいつの間にか大きな渦を作る。
そう、自分の気持ち、努力次第で魅力は輝かせられる。

同い年の彼や、そのわいわい系の女性を見ていたら単純にすごい…というよりも自分もがんばって人を巻き込むような人間になってきたいなと思えてきたのだ。

トーク力は机上の空論…もそりゃ多少は大事だがそれよりも当然のことながら場数である。現場、それは場数を踏むのに最適な環境だった
俺は明日から変わって頑張ってくぞ!!!


……とか飲んでる時には考えてなかった、とにかくただただ楽しんでいた。

ワイワイ系の女性や同い年の彼が話の起点を作り、僕と年下の子がそれぞれ違うベクトルでボケていき同い年の彼がツッコミ、店員達が笑いながら距離を詰めつつ色んな話を展開していく…

ものすごい楽しかった。と気付いたら僕は下を向いていてハッと見上げた。そう、いつの間にか寝ていたのだった。

時計を見ると2時15分………えっ?
おー、やっと起きたか…同い年の彼はそう呟いて、お前1時間以上寝てたぞ、どっから覚えてない?

…トイレ行って席替わったくらいかな?

ああ、ね、そこからぼやぼや喋ってたのは覚えてる?

…え、全然覚えてない

ここまで話をしながら記憶を失ってたのは初めての経験だった。シンプルに酔いと眠気だろう

僕が起きるのを待ってたらしく2時半に帰りタクシーを乗り家に着いたのは3時だった

そこから直でベットにダイブして寝た。起きたのは日の出だった。あれ?明るいぞ…6時25分…本来電車に乗る時間だ…

やべっ…服も髪もそのまま口が余りにもアルコール臭だったので朝ごはんも食べず歯磨きだけ済ませ現場へ出勤した

くそみたいに働かない脳の中よく朝礼で140人くらいを前に安全注意事項とか発表できたものだ。自分の脳がそもそも安全からかけ離れてるのに…しかし、こんな状態だったがその日の調子は良かった。


…年下の彼は僕とあまり絡みが無かったので こんなに面白い人だと思わなかったです!また飲みに行きましょうと誘ってくれた。かわいい
同い年の彼もほな、また二週間後に行きましょうとまた飲む事が確定した


職人と言えばベテランおじさんみたいな、分かり合えないイメージがどこかあったが全然違う。むしろどこかしっくりくるものすらそこにはあった。新たな知見である

僕はこの仕事に向いてないんじゃないか?

そういった悩みを同い年の彼にぶつけた

すると彼は いや、向いてる向いてる…だってどの職長さんとも喋れてるやん、俺は他の現場で喋れない新人監督を何人も見てきたし、何とかなるさ、それにみんなそういう苦悩ありながらこうやって仕事終わって酒飲んで楽しんで発散してるんよ、俺たちもそうやって乗り越えてるんや

その言葉は言葉以上の説得力があった。心が、細胞が頷いていた。

ほんとに楽しかった。新しい環境で新しいメンバーの中では一番楽しかった。
まだ俺は抗う、そしてこの仕事を続ける方向で頑張るつもりだ

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あ、写真はカミカゼというお酒なんですけど間違えてウミカゼ下さいって言ったら出てきたカクテルである
コップの周りに塩をふんだんに使った潮風である
2つの意味でうまい…と言いたかったが味が完全に塩しかなくて風が負けていた

飲み干してまたその「塩」グラスのままカミカゼを追い したので追い風やんこれって言ったらちょっと雰囲気が冷めたので えっ?急に逆風吹いたんやけど?ってとっさに喋ったらウケた

トーク力は回転力、もっと話上手になりたいね