2023年11月、会社の同期の強い勧めで一度本気で彼女を作る気でマッチングアプリを再開した。
これまでも別れてから何回かやってはいたが、まめな性格じゃ無かったので、結局1年やって計10人ぐらいとやり取りして会ったのはたったの1回、それもそこから音沙汰なく終わり上手く発展した事は無かった。
その反省を活かし、1ヶ月だけ課金するという縛りを設け、写真にも流行を取り入れ、女性ウケの良い写真に一新し、名前もとっつきやすい「ななみ」という七三分けで呪術廻戦の人気キャラの名前に変えたり、いいねやメッセージもまめにするようにしたら、1ヶ月でさっきの1年分くらいのやり取りができた。
しかしながら、なかなかLINEをゲットするまでには至らない。1つはやり取りが途中で潰えてしまうか、やり取りの中でこの人とは上手くいかなさそうだな…と見切りを付ける事もあって、3〜4人の会話を出たり入ったりを繰り返していた。
そんな中1人だけメッセージが長く続いた相手がいた。
アイコンはスタイルの良い美人さんだった。
最初はまた詐欺なんじゃないかと警戒していたが、何度か連絡を送り返した限りその線は薄いと判断した。
この1ヶ月で初めてLINEをゲットでき、その流れで1度目のデート…しかも夜飲みを約束できた。
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当日ギリギリまでドタキャンされないかな…とか、会話が弾まなかったらどうしようと不安ばかりが脳内を覆った。
待ち合わせ場所で先に待つ。そう言えば1年以上も恋愛するつもりでの飲みってしなかったなと思い巡らせていると、遠くからアプリのアイコンそのままの美女が現れた。LINEで話していたが気持ちは初めて話すかのような緊張がほとばしる。
たどたどしくも僕が選んだ自信のあるお店にエスコートする。バリエーション豊かな日本酒とおでんが揃う居酒屋だ。
僕はこしらえたショートトークをしながらなんとか場を作っていく。
相手は聞き上手でありながら話も上手である。持ち前の明るさと話から伝わる元気さに手のひらの上で弄ばれるようだった。
そして、僕は避けては通れない食物アレルギーの話を告白する。大抵はここで過剰に気を遣われたりするのだが、
相手は「貴方は貴方、私は私。私は刺身があんまり好きじゃないから食べないし、卵は大好物だから今日も食べる。お互いが好きなもの食べたらそれでいいじゃない。」
と大人な対応をしてくれた。
この依存し合わないお互いを尊重する考え方に僕はグッときた。
それは恋愛観にも現れていて、「年下だからなよなよしてるとか年上だからしっかりしてるもんだと思ってたけど、ただただ個体差の違いなんだよね。そういう意味では年齢にはこだわらないかな。現に貴方も実年齢よりもしっかりしているように見えるよ。」
それはひょっとして脈ありなのでは…と昂らせたが気持ちを落ち着かせた。そういう人は恋愛経験も多いから僕を試そうとしているな…と引き締めた。
お互い日本酒は呑めるのでがぶがぶ呑みながら結局2軒目にも行き5時間ほど話し続けて解散した。
すぐさま僕は2回目を要望したら二つ返事でOKしてくれた。しかもなんと場所はユニバだ…!!
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…マッチングアプリは今や出会いの手段のメイン市場になりつつある。主観だが周りの人でマッチングアプリ付き合いや結婚までしている人も少なくない。
数撃ちゃ当たるという試行回数理論なのでそりゃー付き合う可能性は高いのだろう。でも何かドラマティックさが欠けているだとか、理想を探すならむしろ遠回りじゃないか?とどこか引っかかっていた。
マッチングアプリが最善なのか僕は分からない。だが、僕が今マッチングアプリをたった1ヶ月本気でやり始めたそのとても短い間に数多いる異性の中からこんな素晴らしい人に出会えたのは、たとえ結ばれなかったとしても人生史を考えれば、もはやそれは運命じゃないか。
この時期に始めた事はきっと偶然じゃない…。そう信じて。
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2回目のデートはいきなりユニバだった。1週間前から天気ばかりが気になった。
雨こそ降らないものの当日と前日で気温が一気に10度も下がる極寒となる予報だったが、会えるというだけで気分は晴れやかだった。
僕は6年半ぶりのユニバでまだマリオの世界観で彩られているニンテンドーエリア等が無く、確かハリーポッターやフライングダイナソーがオープンしたくらいの時期以来で、ものすごくワクワクしていた。
相手はその前の週も行ってたくらいの年パスのヘビーユーザーだった。
それゆえに誘いやすかったのもあるし「ユニバ」のハードルが低かった。
逆に言えば普通だとユニバデートは脈ありみたいなものだが、ユニバ好きだから行ってくれただけかもしれないし、ユニバの事を知り尽くしてる以上、いわゆる待ち時間をどれだけ楽しめるかにかかっている。まあ得意分野である。
最初の入場時に少しアクシデントがあったものの、ニンテンドーエリアの入場券を得る事ができた。開場から30分しか経ってないのにもう昼まで入れないという徹底した混み具合だった。
朝早くから来たのでその昼までは3つほどアトラクションに乗った。思っていたより空いていたのは気温が下がった天気のおかげだったかもしれない。昼食のレストランは混んでいたのに関わらずなんとすぐに座る事ができ運が良かった。
トークもすこぶる順調で僕の飽きさせないトークがいかんなく発揮された。
ようやく、相手もなかなか行けないというニンテンドーエリアへ。写真撮影スポットではしゃいだり、アトラクションを2人で写真を撮りながら楽しんだ。低身長キノピオがかわいかった。
結局夜中ギリギリまで楽しんだ。夜ごはんは近くのチェーン店にこれまた丁度並ばずに入る事ができ、総合的にめちゃくちゃ運命に導かれているかのようだった。
…ユニバで告白するというのが1番一般的には綺麗な流れなのかもしれないが、相手(年パス)と僕(6年半ぶり)のユニバの熱量の差が違い過ぎて、僕だけ過剰に舞い上がってたような気がしたので今回は純粋に「楽しむ」事を優先に動いた。
そして、1ヶ月の期間は空いてしまうが、3回目のデートを約束する事ができた。待ち時間が楽しかったと言われた時は嬉しかった。
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タイミングというのは非常に大事だなとしみじみ思う。
もし、僕が大学生…あるいは社会人始めたての22歳とかだったらこの恋愛は成り立っていなかっただろう。
年齢の差とは何かと言えば「失敗量」の差だ。
あーこうしたらダメなのかと失敗を経験し、改まれば今度は同じ失敗をしなくなる。
恋愛はある意味そういった失敗を沢山積むことができる良い機会なのだ。
神様が試練を与えているというように、そのタイミングでこの失敗という経験を与えてくれるのは何かしらの意味があるんじゃないかと僕は思ってる。
つまり、自分の人生史における伏線みたいなものでいつかその伏線回収のために活きる場面が出てくるんじゃないかと、
そういう意味ではこれまでの恋愛も全て別れてしまったが、無意味ではなくむしろ今の恋愛を助けてくれているのだと実感した。
だからこうして3回目のデートまで結び付かせる事ができた。僕はここでしかけようと決めた。
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3回目には相手からの希望で美術館に行き絵画を観る事になった。僕は巡りこそしないが自分も絵を描く事が趣味ではあるので好きな方だ。
2人で考察しながら周っていたのであっという間だったし、なかなかに疲れた。
そこからは少し歩いて早めの夕食をとる事にした。席が6人用のメニュー表だけで仕切られた真ん中の2席で双方からの声が丸聞こえだ。
んー、ここでは言いづらいな…1軒目では当たり障りの無い話にして2軒目へと足を運んだ。
今度はほぼ2人きりの空間だった。いける。
お互い日本酒を嗜み、まずは恋愛の話をしてから本題へ踏み出した。相手は顔も性格も良いので僕は所詮キープの1人なんじゃないか、遊ばれてるだけなのでは…?という不安に見切りをつけたたかった。答えがどっちであろうと僕は攻めると決めていた。
そして僕は好意を伝えた。
相手はえっ?私こそ遊ばれてるんじゃないかって思ってた!?と手で口を覆いながら驚いた顔を見せた。
まあ無理はない。年齢差を考えればお互いがそう思うのが当然の反応かもしれない。
2人の本気を確かめられたのでよろしくお願いします!と柔らかい手で固い握手を交わした。
緊張していたからか、めちゃくちゃ飲んでしまった…
2人改札の前でもう一度握手を交わし解散した。
一気に気が緩んだからか思わずXで報告してしまった。
この気持ちに蓋をするにはあまりに勿体なさ過ぎた。
感情はこの世界にしか無いものかもしれないのに。
でも同時にこっからだなと冷静な自分もいた。これからも失敗はたくさんするだろう。でもそれが全て糧になるのなら怖くないなと思った。
このタイミングで出会えたのが運命そのものだからだ。
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今まで出会えた全ての人に感謝を込めて。
これからも頑張っていきます。