今日だけは言い訳させて下さい

社会人一年目、もう現場配属から3ヶ月を越えそこそこ慣れてきた…と言いたいところだが業務に追われ未だに心も体もへとへとになって1日を終える。

僕は今日、コンクリート工事を担当した。それまでにはサブ担当としてメインの先輩の補助を何回か重ねていき、やがて自分がメインの担当となった。
しかしその時も困った時には先輩に電話していた。

だが今日はその先輩が休みなので完全に1人で見ることとなった。

コンクリ工事は段取りの塊と呼ばれるほど様々な注意点が絡み合い、また業者さん間との連携が必須である。1つでもミスをすると大きく段取りを崩しかねない難しいものである。

そしてよりによって今日は特に複雑な日で当日の即興的な連携も求められるような工事だった。
なので前日から先輩とはあらかたの段取りをシミュレーションし、入念に準備したつもりだった。

しかし、自分にとっての入念は本来の入念よりも数倍もガバガバであった。

当日の朝礼後にまずその想定外に気付いた。早くも僕の想定していたシミュレーションから逸れることになってしまった。

僕はアドリブめいた動きをするのがとても苦手である。同時にマルチタスクが苦手で1つの事にカッと視野が狭くなってしまうタイプである。

その2つの性質によってその想定外に気を取られてしまい本来やらなければいけない行程をすっぽかしてしまったのである。おまけにその想定外の解決にも至らず結局
想定外を頼み込んだ業者、コンクリ関連業者(4社)、そして上司にいきなり怒られる始末であった。

怒られること自体ではあまり傷はつかないものの、その軽いパニック状態になると他のことが疎かになってしまう。

例えばそのパニック状態で自分の道具などを無くしてしまうとする。すると次は自分の道具がどこにあるかにだけで頭がいっぱいになる。
しかし、道具の場所はパニック状態で他の事を考えていたので思い出そうにも思い出せない、こんな疎かな状態だと当然また違う問題ができる。の繰り返しなのである。

ただでさえ平常時でもコンクリ工事は図面通りにいくことが出来ず同時に5つくらい問題が発生することはザラである。なのに前の問題も解決出来ず借金が積もるように是正しないといけない問題ばかり増えていく。
そして案の定怒られる最悪なスパイラルとなってしまう。

そして僕の最大の欠点が2つあり、1つは人の話を正確に聞き取れないことである。

これは致命的でたとえば電話対応でも名前すら聞き取れないことがしばしばである。
また要件も聞きながらメモをとるということもできずどちらかをするとどちらかが疎かになってしまう。そして大概要件を曖昧に聞き取ってしまい、誰かに伝える時にあれ?何を言おうとしたんだっけ?となる。

もう1つは頭に描いたシチュエーションを瞬間的に言葉に出せないことである。
人前でのスピーチやコミュニケーションが出来ない最大の要因でもあり時間をいただければ今のように言葉として成立するものの、とっさの瞬発力が無いあまりに相手を理解させるような会話が出来ないのである。

その2つも相まって今日の工事は図面通りじゃない箇所ができるわ、段取りが悪いわ、ヘイトを溜めてしまうわと最悪な結果となってしまった。

挙げ句の果てに申し訳なさでコンクリを一輪車で運んでいたらつまづいてしまい大量のコンクリをばらまいてしまいかえって足手まといとなる散々なものだった。

本気の申し訳ありません。を多分10回は言ったと思う。さすがに泣きそうになったがグッとこらえた。しかしあまりの不甲斐なさで心がぐちゃぐちゃになった。
本当にこの仕事向いてるんかなと思った。いや、社会人として生きるのに向いてないんじゃないかと思った。はぁ、ダメだな、俺。

事務所に戻ってからは上司と2人で反省会が行われた。
上司にお前、自分がやるという意識が足らなすぎる、誰かがやってくれると思ってるやろ。まずその根本がダメだわと指摘された。

そんなつもりは…と一瞬言いかけたが結果的に見ると1つの問題に対して他の部分は疎かになっていた。

その他の部分は「順調にいくこと前提」で動いていた。そもそも一番始めの「想定外の問題」も注意していれば気付けた問題で業者さんがちゃんとやってくれているだろうという甘さから生じた問題だった。

人のせいにはしていなかったものの自分が未熟だからという理由で逃げていたのも事実でそれを「誰かがやってくれると思っている」という言葉で片付けられるなと思うと図星のように感じた。

業者さんがスムーズに段取りよく工事するにはお前が裏であれこれ入念な準備をせんとあかんし当日も業者さんが何を求めているのか察しないといけない。それは自分がやるという意識がそもそもないと生まれないと続けて上司は述べた。

確かに日常ではある程度相手のことを気遣えて能動的に行動出来ているとは思っている。しかし仕事となると自分の業務、やるべきことでいっぱいいっぱいになってしまい業者さんのための動きが出来ていなかったのは紛れもない事実だった。

日常ではそれを分かっているがゆえにものすごくもどかしい気持ちになった。それほど仕事をやってる時の自分は視野が狭くなっているのだろう。

これは確かに初めてだからというのもある。そして何点か挙げた僕の苦手分野、スペック不足も当然考えられるであろう。しかし、それら全てが「言い訳」に過ぎない。

結局は「できなかった」し「やらなかった」のである。
そしていかなる理由だろうと「やらなければならない」のである。

それはもちろん自分では理解しているし、これを機に自分の意識を変えていかないとこの先もっと困難なことが出てきた時にまた同じことを繰り返してしまう。

しかし、今日だけは弱音を吐かせてほしい。
知識不足は何より何が問題かすらが分からないし、何が正解かすら分からない。

即興性がないと対処の仕方が分からないし、はよやれと対処方法も教えられず怒鳴られる割には間違ったことをするとこっぴどく怒られる。

時間に追われているのに他の業務を任されたり走らされたりする。僕の言い分は関係ない。そうして出来た問題に対処するうちにたくさん違う問題も出てきて終わらないモグラたたきをしているようなものだ。
そして何とかします。できません。を方々に言ってはどちらの解答であれ怒鳴られるし解決も当然しない。これが今日共倒れし最悪の結果となった。





僕のことなんて誰も助けてくれはしない。それはこの社会では当たり前なのである。今の弱音も全て「自分のせい」だし、それは間違ってはいない。

でも心が折れそうだ。挫けまいと今唇を噛み締めてはいるものの負担がまだ今の未熟な自分には大きすぎる。

ただ仕事では1つも弱音を吐くことなく強く生きたい。でもそんな強がりばかりでは今の体では保たない。

だから今日だけは言い訳させて下さい。頑張ったなと誉めてやって下さい。自分にそう言い聞かせています。

そして、明日からまた相手の気持ちを考えて行動出来るように広い視野を持ち、自分の業務に全う(まあそれで時間が終わるんだけど)し、さらに業者さん、先輩上司が楽に働ける環境に少しでも貢献できるように頑張っていきます。おつかれっしたー