茨木現場物語④〈働く意味〉

足場解体が終われば一気に外周り、部屋の中を仕上げにかかる。そして一通りの社内、事業主の検査をクリアすればとうとうお客様に実際に見てもらう。そして書類提出など完全に終われば、管理会社へ引き渡しとなり、お客様の引越しが始まっていく。

その一連の流れである2022年11月〜2023年2月のお話である。

 

部屋内検査とは?

検査はもちろんだが、部屋の中の工事が終わったフロアから順々に行っていく。

 

墨出し→ALC(軽量コンクリ)→サッシ→ガラス→断熱ウレタン→設備配線→レベリング→墨出し→ユニットバス→収納家具→造作→電気器具→クロス→玄関石→キッチン→洗面、トイレ→家具扉→玄関扉→付属品取付→フローリング、巾木→部屋毎の扉→最終清掃

 

ざっくりこんな感じですかね、大体一部屋3ヶ月くらいですかね。

 

僕の仕事はこういった工事の進捗と搬入日程の管理をしている。

まあ職人さんによっては早い遅いがあるので、ピンポイントに搬入しないと部屋の邪魔になったり、搬入がかち合ってしまうと喧嘩の元なのできっちり決めておかないといけない。

 

もちろんだが、この→の順序を変える事もほぼ出来ないので、遅れた場合はその後続業者の日程もごそっと変える必要がある。

 

遅れると大概フローリングや木建屋の業者の時間が無くなるのであんまりズラすと怒られてしまう。そうはならないように持っていくのが僕や上司の腕の見せ所といった所だろう。

 

え?簡単じゃない?って思った人はそれがフロア毎で全部違うとなった場合どうか?そして今話したのは部屋の中だけの話だ。

 

大抵の現場は2階から仕上げて最後に1階を残す。1階の部屋を職人さんの詰所や道具置場にするからだ。

この現場では2棟8スパンずつの1フロア16部屋あるわけだ。

たとえば上棟したお盆明けくらいの僕が鳶さんと胸ぐら掴み合いしてた時くらいに他の階は何しているかと言うと

 

(左は先行棟、右は後行棟とする。)

14階 先行ウレタン断熱 ー

13階 サッシ ALC

12階 ユニットバス ガラス

11階 造作 造作

10階 クロス 造作

9階 電気器具 キッチン

8階 フローリング フローリング

7階 ー 最終美装

6階 監理検査 監理検査

5階 ー ー

4階 事業主検査 事業主検査

3階 事業主検査 事業主検査

2階 検査手直し 検査手直し

1階 ー 一部造作

 

これだけ同時に作業されているのだ。

下から上にかけてやっていくのだが、全てが並行して進んでいく。

なのに、外ではコンクリ、仮設足場、左官、補修、タイル、吹付、防水、手摺、EV、外構工事…こりゃーマルチタスク必須案件だねー。

 

もちろん、1人でやる訳ではないが全ての業種の本日の動き、翌週の動き、翌月のノルマなどある程度把握する必要がある。

 

そして、これから本題に入るのだが、

「検査」とは壁のキズなどの不良部分をひたすら粗探していく作業の事だ。

 

これを所員でやる事はほとんど無くて、大まかには

 

監理検査→社内検査(弊社で雇った会社の人に検査してもらう)→チェックレディ検査(事業主側が雇った会社の人に検査してもらう)→事業主検査→検査手直し→(最初に戻り、直ってるかどうか確認する「再検査」の実施)

を大体2フロアずつで実施する。

(チェックレディ検査に男性がいる事もあるし、今時のLGBTには配慮していないが、それ以外の名称が未だに無いので今回はこの名称で統一させていただく。)

 

それぞれ指摘箇所を違う色のマスキングテープを貼って差別化を図っている。そして今はスマホiPad)、PCで指摘箇所や該当業者など一括管理出来る!すごいね!

そしてそれを職人さんに伝えるために1枚1枚紙を印刷して渡している!すごいね!

 

結局は職人さんまで使えるようにならないとデジタル化なんて到底無理…というか、効率的にはならない。

まあ、無いに越した事はないし、この時代はデジタルとアナログの転換期なのだと割り切っているので仕方がない。

今はひたすらデジタルを無理やりでも入れていくのが最善だろう。

 

指摘箇所なんて、一部屋平均120箇所くらいある。

そりゃ雇われた人は見つけた数やマスキングテープの消費量でお金貰ってるから無茶苦茶な人に当たったら、

やたら多い長いマステ指摘の人や、同じ面の同じ内容の指摘なのに分けて指摘をあげる人、手直し業者が違ったりうまくスマホに対応出来ない人がいて余計な仕事が増えたり、これまた面倒なのである。

 

これをいわば0にする作業は途方もない。というか、不可能に近い。

見る目が細かいというのもあるし、基本施工する人が手直しするので余裕がない。

 

箇所によっては最初から出来上がっていた所を剥がしてやり直す場合もある。

再確認まで終われば、あとは僕たち施工管理側で残りを0にしていく。

 

途中階までは僕1人で行っていたが、まあー、間に合わないので、僕を主軸として4人体制で部屋の確認をしていったのだ。

 

鋼の15連勤術師

 

一通り確認が終わったらついに内覧会が始まる。

 

内覧会とは、新築の契約者(お客様)を対象とし、引き渡し前に行われる物件の状態確認を目的とした会を指す。

いわば検査の延長戦というか、僕らにしてみれば本番といったものです。

 

本番というのはノルマがあり、全体平均指摘2以下、指摘0を50%以上を達成する事が課せられている。

特に減給とか個人評価に関わる事ではないが、事業主や社内の評価の軸としてはそれなりに関わってくる。

 

指摘を減らすにはとっておきがあって、クイックリペアというものが存在する。

それは内覧会の当日出た指摘を汚れやちょっとしたキズならお客様が帰られるまでに業者や所員で直していくのだ。

 

するとあら不思議、1部屋30もあった指摘が0になったじゃーありませんか。

 

素晴らしい裏ワザである。

 

内覧会はこりゃまた忙しい。

検査指摘を0にする→内覧前セッティング→内覧会(→手直しあれば手直し→再内覧会→残、追加あれば手直し→再再内覧→残、追加あれば手直し→再再再内覧→残、追加あれば引渡しまでに手直し→引越しした時に見てもらう)

 

をひたすら段取りする。

結論から言えばカッコ内の輪廻に入ってしまうのは半数以下なので見た目よりはマシではあるが、そもそも「指摘0と内覧前セッティング」が鬼みたいな時間を要する。

 

「指摘0」とは検査で貼られていたマスキングテープを全て剥がした状態にする事だ。全部屋合わせると20000箇所以上もあるのだから当然、見落としは存在する。まあこれはまだいい。残っているままなら業者を呼べばいいのだから。1部屋5分あれば出来る。

 

「内覧前セッティング」がヤバい。

キズなどが本当に0なのかの再確認、バルコニーの落ち葉拾い、及び汚れの拭き取り、扉の木枠のノリ汚れなどの美装、キッチン、洗面、浴槽などの水廻りの水アカ拭き、床、収納スペースなどのホコリの除去、電気のブレーカー確認、トイレ内のチェック、その他決められたルールに沿ってセットする。

 

何がヤバいのか。美装業者が足りないのだ。

こ…これを所員がやろうとすると…雑にやっても1部屋1時間かかる。

普通にやっても2時間かかる。これでも正直良くないくらいだ。つまり1日5部屋だ。(ただし残業を正とする。)

因みにほんまに綺麗にするなら4時間はかかる。

 

内覧会が始まる3日前の時点でセッティング出来てる部屋は…0だった。

 

いや、もーっと前からやってれば良かったやん?ってなる人がいると思う。

無理な理由が2つあった。

 

一つ目は、こんな大事な時に後輩は盲腸&コロナで2週間、僕もコロナで1週間、計20人分の損失という盛大なやらかしをしてしまうのだ。

 

もちろん、残って頑張ってる所員は内覧セッティングだけが仕事じゃない上に休みの人の分の引継ぎまでこなさないといけないので手伝える余地などまるでない。

正直、この2人がピンピンしてたら苦労する事なく間に合っていただろう。

 

二つ目は事業主側との打合せがグダグダでセッティングのルールが決まったのがそもそも内覧の5日前だった。

 

ギリギリ間に合ったのは、内覧が1日15戸〜20戸だからだ。内覧前に4人がかりでやれば何とかなる。

それは「内覧前」だから出来た事だ。

 

ちょっと前にお話した階数ごとに並行して作業を行うから大変!といったのがそのまま内覧でも表れて

 

残りの指摘をあぶり出す

残った指摘の業者振り分け

指摘の手直し指示

手直し完了確認

内覧前セッティング(1番時間かかる)

当日内覧対応(後で詳しく説明、ってかこれで1日分の仕事と言っても差し支えない量)

内覧片付け、翌日の内覧準備

内覧で出た指摘の業者振り分け

内覧手直し指示

内覧手直し完了確認

 

を1日ずっとやるんだから終わるはずがない。

 

そして、エグい事に当然ながら土日祝こそいわゆるお客様がお休みの日なので多い。かと言って平日も普通に内覧会をやっている。

中日のクール期間が2日ほどしかなく、そこで一気に大きな手直しを行っていくので休める筈がない。

信頼を失っても何も思わない人間なら休めるだろう。

人手不足?もちろん応援を入れてやってはいるが、1日しか来ない初めての人が来たとて教えるだけで時間を潰し、かえって業務量が落ちるという本末転倒が起きる。どう頑張っても一同背負ってしまうと頑張ってしまう輪廻からは脱却できないのだ。

 

その結果が15連勤である。

 

でも思ったより何とかなったのはめちゃくちゃ動く仕事でも脳を使う仕事でもないからだろう。ただ休む時間はほぼ無いので、段々理性を失ってただ任務をこなすマシンの如く働いていた。

 

効率の良い働くためだけの駒に手っ取り早くなる方法だね!

そういえば、就活では完全週休2日って言ってなかったけ、あの発言どこに行った?

……君のような勘のいいガキは嫌いだよ

本末転倒【定期】

さて、内覧会当日の動きをさらりと説明すると

 

6時30分に現場到着、そして現場の鍵開けをし、15〜20戸を後輩と2人で電気付けたり床暖房を付けたりやなどの段取り。そして、全体の朝礼を行う。

 

僕は基本的にお客様の指摘をi Padで入力する仕事だ。

9時、11時、14時の部で平均5〜7組の中のおよそ1〜2組のお相手をする。

本来はそのために雇った人達が施工担当として代わりに相手してもらう。しかし、ピークの忙しさになると来てもらった人達では追いつけなくなるので所員が投入される。それが僕だ。

 

大まかな流れとして、お客様がエントランスからやって来る。

受付の方(事業主側)が部屋番号を聞き、部屋の大まかな説明をするアテンド(事業主側)と質問に対応する施工担当が同行し、部屋の中に入る。そして15分ほど部屋の中でアテンドが説明した後、お客様に部屋の不具合が無いか見てもらう。

もしある場合は現地にテープを貼り、i Padにて指摘箇所を入力する。

指摘があるにしろ無いにしろ、ひとまず見てもらったら一旦部屋を出てもらって、施工担当はそこで離れ、アテンドのみで共用部(駐車場、駐輪場、ゲストルームなど)の説明に20分ほど回る。

指摘がある場合は、その回ってる間に先ほど述べたクイックリペアを出動させ直していく。

回りきった後、且つリペアが終わった後に指摘のあったお客様には再度部屋を見てもらう。

アテンドによる説明が全て終わった後は自由時間があり、そこで部屋の採寸をされる方もいれば直帰する方もいる。

 

これでも大まかに話した方だ。それなのに言いたい事はたくさん溢れていく。

 

まず、説明を聞いたらわかるように人によって見て帰る時間の振れ幅が大き過ぎるのだ。

 

早い人なら説明込みでも50分ほどで終わる。しかし、長い人はその指摘を見る時間だけでも2時間かける人もいる。その間は休憩はおろか、電話対応もままならない。

そういう人が重なればいわゆる人手が足りない状態になるのだ。

 

そして指摘には「追加」も存在し、クイックリペアで直した後に違う場所が気になって再指摘したり、自由時間の採寸をした時に見つける方もいる。

 

そうなった場合、たとえば9時の部の再指摘を見る時間がもう次の11時の部の内覧中でかぶって見れないとなった時は僕らが召喚される事になる。

言っちゃ悪いが運ゲーである。

 

ヤバいお客様もいるって話はここではやめておく。でもいない訳ないよね…(震え)

 

あとi Padを導入したのが関西ではこの現場が初めてで、且つ媒体もアプリも全て事業主側で与えられたものである事がかなり尾を引いた。

 

問題①みんな慣れてない

ちょっと昔はみんな紙で指摘を一つずつ書くアナログスタイルだったとはいえ、今時はデジタルでもある程度は対応出来るようにはなっている。

 

が、そのアプリ自体が少し複雑でその操作に慣れるのがまず難しく、新しく来た人にはまず教える所から始めないといけない。アプリが重たく起動も遅いし、間違ったボタンを押すとアプリ自体が落ちる時もある。

 

で、慣れてないと本番でもミスも多いし時間もかかるしで、結局人手不足で応援の方を付けても所員が隣にいて教えながらやるという本末も七転八倒噴飯物である。

 

問題②情報共有が出来ない

これが1番の問題である。指摘をもらえばまずやる事は業者の振り分けだ。これは所員で最終チェックし、事務員さんなどにまとめてもらう。

 

しかしi Padのデータにはお客様の個人情報もおるので迂闊にデータを共有出来ないのだ。(というルールなのだ)

なので、施工側が知る事になるのはお客様が完全に帰ってから事業主側から送られてくるメールで初めて伝わるのだ。

 

つまり、アナログの時より1テンポ以上遅れるし、PDFデータなので内容を結局自分のPCに直接タイピングして整理しなければならないのだ。

残念ながら指摘が多い人ほど当然遅く帰られるので、施工管理さんどうぞ残業してくださいね〜状態になる。

実際帰るのは電気を消し、アテンドさんの出したゴミなどを片付け、戸締りをし業者割振りして明日の準備をしたら、平均21時帰りになる。

もしアナログ形式だったらもう1時間は早く帰れただろう。

 

まあまだ試験段階だったので許すしかないのだが、i Padのせいで苦労も多くなってしまった。

 

まあ、後は内覧会の初日に所長がコロナになったのもまあまあな要因だった。

 

本来のポジとしてエントランスに次席がお客様が来た時にインカムで裏にいる所長が聞いてそれぞれ待機している人に指示していく。

所長がいわば内覧会の核となる存在になる筈だった。

お客様の指摘を一通り聞いた後、所長に連絡をし、業者をそれぞれ注ぎ込む。時間と人数が有限なのでどの部屋にどう入れるかも大事になってくる。

まさか、所長の代わりが僕になるとはねぇ。

 

そんな大層な仕事ではないが、この仕事をするとずっと所定位置に付きっぱでまじで休憩時間すら無い。ごはんが食べれるか食べれないかぐらい。そしてその間は内覧セッティングが出来ない。

つまり、内覧終わってからやるのだ。20時まで休憩無しでひたすらやっていく。

 

話は戻るが美装の人手が足りてないって話…。これはなかなかに内覧会でも厳しい現実を突きつけられる。

まああ、指摘として汚れが多いのだ。

これを事業主が良く思わなかったそうで、それが次席の耳に渡り、僕らが手を抜いているんじゃないかという注意を受けた。

いやいやいや、こんな必死でやってるのに。

まあでも次席も人手不足なのは分かっているから強くは言えなさそうだったが、やはり僕ら後輩がコロナでのうのうと休んだ事による全体的な余裕の無さが次席のイライラに繋がったのだろう。

誰も責められないし言い返せなかった。

 

だが恐ろしい事にその翌日から、

事業主が雇ってるアテンドさんが事前に部屋をチェックし、汚れなどがあればお客様が来る前に「所員」で綺麗にするという(クソみたいな)決まりになった。

これで指示役の僕も余裕がある時は誰かと代わって掃除したりなど前よりも任務が追加され忙しくなった。

アテンドさんやってくれよとは思うが、汚れている原因は施工側にある。

キズ、汚れを見つければ揚げ足を取るかのように報告されるのは正直ちょっとやめてくれよ…とはなった。

 

内覧が始まって1週間後には所長も復活し、全体的にキッチンや洗面中心が汚かったので、美装ではなくその施工業者の洗い屋を呼ぶ事にした。

 

藁をも掴むように猫の手も借りたい…とは思っていたがまさかほんまの素人アルバイトが来るとは思っていなかった。

5日間計画で内覧当日以降の部屋をとりあえず拭いてもらうという簡単な仕事だ。

 

リーダーがいるから大丈夫と番頭さんは言っていたがリーダーも素人だった。リーダーは5日間ずっと来るからリーダーらしい。なるほど…なるほどじゃねぇよ!

 

まあでも、毎回現場に初めて来るで経験無い人だったら、その都度現場ルールや清掃手順を説明しなければならない。

素人リーダーがいる事でその人に説明さえしていれば、後はオートマティックに上手くいく訳だ。

 

いつもリーダー+2人の3人で来られていた。2人は道具すら持って来ていないというなかなかの気概ぶりだ。

 

最初は「素人の僕」が素人のリーダーに清掃手順を教える。

不安要素が多いが、素人の僕は指摘の多い箇所を把握しているので要所は掴んでいる。

 

そして内覧で1日潰れるので彼らを見ている暇は無い。

彼らはバイトなので定時後に来て、定時前にとっとと帰るので、帰ってから部屋を抜粋して確認する。

ん?部屋によって綺麗汚いのばらつきがすごいな…

 

翌日問いただすと、リーダーは比較的真面目にされていた。(それが最低限で最大の救い)

1人はその翌日も来られていたドラえもんみたいな女性なのだが、身長が低くて上側が拭けなかったらしい。

なので脚立を付けようかと思ったが、ぶつけてキズを付けられても良くないので、リーダーに上だけ拭いてもらう事にした。

もう1人も若い女性だったが、2度と来なかったからか、エグいくらい残っていた。クソですねぇ。

 

なのでその日の新規も若い女性だったが、少しキツめにもう一度僕が説明をした。

明日からリーダーが僕が言ったような説明をお願いします。

と少しでも仕事が減るように呼んだんだから頼むよと心の中でため息をついていた。

 

やはり、リーダーは真面目で少し抜けはあったものの仕事はきっちりこなしていた。

なんだろな、新しく来た若い女性の箇所はやっぱり1番汚かった。まあその日限りだし、リーダーがそのケツを拭ってくれているので効率は落ちてるかもしれないが許した。

 

それよりも、格段に汚れの指摘が減っており呼ばれる事も減れば、業者割振りの仕事も減ってきたので総じて考えれば大戦力になっていた。

 

気付けば2週間、全ての部屋の1回目の内覧が終わった。つまり完売しているのだ。この時点で完売は相当人気だという証拠である。

 

そして全体平均指摘2以下(モンスターを除く)、指摘0が50%以上は達成された。

 

最初の内覧が終わっても、指摘が残れば再内覧、再再内覧…とひたすら上記と同じ段取りは続くし、やはり残っていくお客様は粒物揃いになっていくので、それなりに直したらオッケー👌にはならなかった。

所員は所員で業者により厳しい目線で手直しを見て回り妥協をしなかった。

 

他にもまあ、色んな事があったが言いたい事は書いたのでそろそろ本題に入ろうかと思う。

 

責任をどう操るか

検査、内覧を通して思ったのは「責任」と「働く意味」である。

 

上では散々文句を言うていたが、実際来てもらったお客様に喜んでもらえるとやって良かったなと思える。

それが建築の中でも特に繊細な住宅、そしてそれを0から作り上げる施工管理が味わえる特権だと思う。

味わいが様々な苦悩と共に抽出されるので深いし重い。

 

働く意味を考えた時に今のようなやりがいって大事だなと思った。また、自分が行なった事が周りに良い影響を与えた時気持ちいいな。

あーこれが承認欲求ってやつか、貢献する事で自分がこの世界にいて良いんだと自己肯定感につながる。

 

僕の働く意味はこの社会の歯車でも何であれ貢献してその貢献した自分をつまみにして気持ちを満たす事である。

プライベートもそれが社会の歯車じゃなくなっただけでやってる事は似たようなものである。

 

やりがい搾取と聞けば嫌な語彙にはなるが、やはりそのやりがいというのは不思議な魔力が秘められているのだろう。

 

もう一つは責任の問題だ。

責任は自分にとってマイナスになる恐れがある場合にしか基本発動しない。

マイナスが無くても責任を保てる人は自分自身でマイナスを定めて律しているからなのである。

 

僕の仕事は良くも悪くも誰1人欠けても一気に大変になる状況で働いている。

休む日は当然の事ながら前日に引継ぎをし、休みの日分の仕事が翌日に積もっていく。無理やり休むより現場が稼働しているなら働いていた方が総合的に楽な時すらある。

 

そして、もしその仕事が出来ていなかった場合直接怒られる訳である。そして結局尻拭いするのは自分自身である。

仕事を真面目にするのは実際現場のためなのかもしれないが、そういった責任が自分にまとわりつくのは結局自分がやらないといけない、やらないと怒られるという環境があるからなのだ。

 

たとえば指摘していく検査員が別に適当に多く貼っていても、自分が手直しを指示する訳ではないので痛みを気にせずぺちぺちテープを貼れるのである。その尻拭いは施工管理が行う。

 

アテンドさんもお客様に文句を言われても、自分が作ったものではないので、口では謝っててもそれだけなのだ。後は一切関与しない。

そんな人達が3連勤大変なのよ〜って昼ごはんの時ぺちゃくちゃ喋りながら17時30分に帰ってた時はさすがに腹が立った。

また、意味分からないくらい人数が居て暇そうな人が多かったのも無性に腹が立ったし、1人分の仕事量の価値を減らしている分、責任を分散させており意識が低かったように思える。

どうせ誰かが助けてくれるみたいな思考回路で施工側に頼ったりなどしていた。

施工管理に至ってはそんな事はあり得ない。

 

手直しに来る職人さんも番頭さんも、結局直しが甘かった場合、お客様などに怒られるのは施工管理なのである。

そういった怒りをしっかり職人さんや番頭さんにぶつけないと彼らは深刻さを理解出来ないのだ。

 

なぜなら、ちゃんと自分を律している責任のある人は手直しもしっかり一度で綺麗に終わらせるからである。

 

出来ない人が結局残るし責任が薄いからそうなってしまう訳である。だから僕らが植え付ける必要があるのだ。

 

施工管理側も叱責を手を抜こうと思えば出来るわけだ。正直流れに身を任せて許す方が簡単だ。

基本的に怒られるのは上の立場の人だ。まあそこから下へ流れてくる訳だが。

 

施工管理はいわば板挟みされた怒り請負い人であり、責任の到着地点なのである。

 

そんな損な役回りではあるが、自分が手を抜けばその分だけ現場環境がすぐ悪くなったりと反映しやすい仕事なだけに気は引き締まる。

緩くやってても何も良いものは生まれないですからね。

 

で、話を最初のやりがいには戻るのだが、そういったリスクや責任を背負って神経すり減らしながら働くからこそ得られるものだと思う。

また、こうやって怒られる環境は逆に恵まれているんだなと思えてきた。まだまだ自分を変えられる可能性に満ち溢れているからだ。

 

これが正解とかでは無くて、僕は性に合っているだけで、責任が付きまとうのがイヤな人は別の仕事、生き方をすればいいだけの話である。

 

 

…今後いろんな人と仕事で関わっていく上で、現場は生半可な気持ち、責任の無い人がいてしまうと結局僕たち施工管理の仕事が溜まってしまう。

 

怒るというのは手段として最後の方として、きちんと条件を課さないと相手は縛りが無ければすぐに弛んでしまう。

相手に仕事をしてもらうようには簡単に許さないようにする。そこを妥協してしまうと自分に仕事が増えるだけだ。

 

自分1人で「仕事を背負う」のは交渉から逃げてるだけでいわば「仕事の怠慢」なのである。

それが上手く仕事をするやり方だし、今後も大幅に仕事量が増えていく中でしなければいけない課題である。

 

書きながら全然自分は上手くやれていないなーとため息つきながらこの第四章を終わらせる。

 

あとは残すところエピローグのみとなりました。

この章は特に長かったですが、最後まで読んでもらえると僕のやりがいもあったなぁと思うものです。

まあ、半分以上は自己満なので強要はしないですが。では、また👋