くみこ 2ndアルバム『真空』

『真空』は、ただの素人であるくみこが2020年6月〜8月に作成された2作目のアルバムである。

△解説

アルバムタイトルは表題曲である「シンク」の歌詞に出てくる「真空」から取っている。

2020年6月はちょうど作者が現場配属になった時期で、特に最初の時期は「息が詰まるように苦しかった」と話しており、そこから息ができる空間ではないという意味での「真空」が使われているという説もある。

 

△収録曲

全作詞:くみこ

1.蒼い冬

2.黒の果実

3.殻っぽ

4.平然のI don't know

5.シンク

6.階段

7.運命論者

8.蜘蛛の意図

9.〜1Years

 

△曲解説

1.蒼い冬(2020年6月作成)

社会人になって初めて作られた曲。作者のまともな青春を送れなかった高校時代を描いている。

爽やかな青色よりもしっくりくる蒼と春より冷たい冬からタイトルが取られた。

作者のポイント

娯楽も快楽もない妄想だけがモノクロの彩り

「モノクロの彩り」や「氷が熱を帯びて」など相反するものを合わせる事で思春期の不安定さや整合性の無さを出している。

 

2.黒い果実(2020年7月作成)

ストレスを心の中に溜め込むのではなく、体外の代わりの場所に保管すれば自分の中にストレスを全く溜め込まなくて済むのでは?という作者自身の経験から出来た曲。

何を言っているのか分からないかもしれないが、作者自身も何を言っているのか分からないくらい当時は迷走していた。

 

溜まったストレスは頭上に黒い大きなぶどうのように実っていく。

ストレスを発散する時に風船を針に刺した時のように外皮が割れ、乾いた黒い砂のような中身がこぼれ出すイメージだという。

 

その方法で果たしてストレスが減ったのかというと全くそうではなく、当たり前の事だが体外と言えど心の中からの枠からは逃れていないので、普通にストレスが溜まっていたそうである。

作者のポイント

電車の音 かき消すようにまた1日が始まる

その主人公にとっては電車の音が1日の始まりの合図で無理やりかき消してストレスから逃れようとしている。

 

3.殻っぽ(2020年7月作成)

空っぽではなく、「殻っぽ」というタイトルにしているのは中身が空洞なのが重要ではなく、中身がない容器の方をスポットさせているからである。

ここで言う容器とは人間の体の事で、何も考えられない抜け殻になった主人公を指している。

 

作者はこの頃に主幹ブレーカーが落ちたかのように生きる事をやめたくなる時期があり、その自殺を考えていた期間とそこからの復活までを歌詞にしている。

作者のポイント

殻っぽのカラダに入る冷たい思考と缶コーヒー

これは完全に作者の実体験で、仕事の休憩中にベテランの職人にもらったアドバイスと冷たい缶コーヒーで一気に我に返った事からそのまま歌詞として使っている。

 

4.平然のI don't know (2020年7月作成)

人に頼ることでしか生きていけない才能のない人間を主人公にしている。ちょっとイライラした時に書いた曲。

作者のポイント

才能無い脳どう使わせんのう?平然のI don't know 待つしかないの

この語尾を「のう」で韻を踏みまくった歌詞。そしてこの部分が歌詞の本質でもある。

知らないという事を恥だと思う事もなく、頼る事を前提に生きているため、薄っぺらい人間になるんでしょう。

 

5.シンク (2020年8月作成)

シンクは「身躯」「辛苦」「真紅」「深紅」など様々な要素が含まれるためカタカナ表記となった。息詰まる現代社会に抗いながら生きる主人公をテーマにしている。

 

作者のポイント

真空状態 息詰まる現代社会 奥の埃をわざわざ舞い上げる

まさしく今の社会そのもの。コロナが流行ってから直接的な交流よりSNSでの交流が多くなり、見なくて良かった情報を見てしまうという事も多くなったように思う。

 

6.階段 (2020年8月作成)

作者は中高6年間を私立の閉ざされた空間で過ごしていたため、大学生になった時一気に大人に上り詰めた感覚と大人って大したことないなという感覚が同時に湧いた感情を歌詞にしている。

 

ただ大学に行けば色んな人と出会う事ができ、ほんまにクズみたいな人もいれば自分まだまだやなと感じるくらい努力してる人センスのある人がいて総じて自分の客観的位置を知るには良い4年間だったなと今では思っている。

 

作者のポイント

昇っていけどゴールなどない 高みを目指し続けるこそが大人明日を変え続けるのが大人

目標を持って、その目標を突破しても、また次の目標を作ってキャリアを自ら切り拓く人間こそ大人だと言ってるわけですね。

用意された階段を登ってるだけじゃ辿り着けない境地です。驕ってるヒマはないんですよね。

 

7.運命論者 (2020年8月作成)

「人生とは一本道で、全てあらかじめ決められたレールの上を通って生きている。」

これは作者の考えでもあるいわゆる運命論である。

無数の選択肢があるように見えるが結局は1つの答えに辿り着くわけでその1本の答えもまた自分の意志を超越した運命に導かれてると考えている。

 

ただ1番大事なのは運命が全て采配してるからって努力をやめたり、後は野となれ山となれ状態には絶対になるなという事ですね。

自分の魅力を上げないと当然ですがせっかく降ってきたチャンスを掴み取る機会と成功率が上がりませんので…。

努力するかしないか、成長するかしないかもまた運命が決める事なのですけどね。

 

作者のポイント

過去はもう変えられないんだ 未来もすでに決まっている ひたすらに選ばれてみろ 紙一重の今を幾重にも重ねて

未来も決まっている ひたすらに選ばれてみろ というのは何か受け身な印象も受けるけど実際は努力を前提とした運命論に沿った歌詞である。

運命をさだめとかきせきとか他の意味で読ませるのはちょっと運命がうるさかったってのもあるが、only one要素を入れたかったので「きせき」と読ませてある。

 

8.蜘蛛の意図 (2020年8月作成)

主人公は太宰治でも有名な「蜘蛛の糸」に出てくる「かんだた」と少し似ている。が、この歌詞の主人公の方が根っからの悪党である。

 

ご都合主義で奪うように貪るように生きて幸せを得てきた。

 

しかし、我に返ったら幸せの定義を見失い、ただただ物が溢れてるだけの独り身になっていた事実をつきつけられ、因果応報だなと呟いてる。

 

作者のポイント

落ちても全うしても死ぬことが決まってるなら登りつめたいとあがいたのさ

登りつめたいとの中に「糸」があったり、なんてすっぱいんだの中に「スパイダー」がいたり、あちこちに蜘蛛の要素が散らばっている。

原作がある分、ストーリーの補助として一役買っており、曲の完成度も高いと作者自身も話している。

 

9.〜1Years (2020年8月作成)

かつての彼女と付き合った1年ほどを歌にしている。

お互い忙しくなり、連絡する頻度会える頻度も減ってきた今こそきちんと愛情を伝えるべきなのかではないかと考えていた。

共依存ではなくお互い自立していけるようになるのが目標だった。と作者は言う。

 

作者のポイント

…歌詞解釈したくないなぁ、色んな事思い出して心がぐちゃぐちゃになりそう。まあ気を取り直して

強がってる 強い君

強がれるだけ強いよねという事です。案外強がれないよ。

だって自分は

お互い忙しくなり会えなくなってから君を心配するばかりに僕はぶっ倒れて

また君に気を遣われ情けなくなった

なんだから。情けないよね。

 

△まとめ

社会人の不条理は抗うのも一苦労で本当にしんどかった。自分の価値を根本から見失うくらい。

 

仕事に従事するほど徐々に変わりゆく思想が歌詞に出てきたりして、自分の中の変化に気付けるのはこういったブログや作詞ならではだなという発見を大事にしようとノートにまとめていったのもこの時期である。